私は、自分のことを静かな人だと思っている。声も大きくないし、動きもゆっくり。
子どもの頃から、好きなことに出会うと、その場所に長く留まってしまうところがあった。
周りからはマイペースだね、と言われてきたけれど、ただ目の前の気持ちを大事にしているだけなのかもしれない。

昼間の私は、穏やかな時間の中にいる。定食屋で働いていた頃に覚えたのは、
人と向き合うときのやさしい距離感だった。話しすぎなくても、
ちゃんと伝わることがある。友達と会って笑っているとき、肩の力が抜けて、素の自分に戻れるのがわかる。

でも、夜になると、心の奥が少しだけあたたかくなる。布団に入って目を閉じると、
昼間は胸にしまっていた気持ちが、そっと動き出す。
あの言葉が嬉しかったこと、あの視線が気になったこと。
可愛いと思われたい、そんな小さな願いに、自分でも驚くほど心が揺れる。

新しいことに触れるときは、いつも少し怖い。でも、
実際に踏み出してみると、思っていたよりもやさしい空気に包まれることがある。
信頼を重ねることで、少しずつ自分を預けられるようになる。その変化を、私は静かに楽しんでいる。

だ全部を見せるわけではない。でも、一緒に過ごす時間の中で、少しずつ解けていく自分がいる。
最後に残るのは、静かな余韻と、温かな記憶。私は今日も、控えめな笑顔のまま、その続きを大切に抱いている。